食育コラム

子供の砂糖摂取量ガイド|WHOの基準と年齢別の目安

「うちの子、砂糖を摂りすぎていない?」——そんな漠然とした不安を感じたことはありませんか? 実はWHO(世界保健機関)は、子供の砂糖摂取量について明確なガイドラインを出しています。この記事では、WHOの基準と日本の食事摂取基準を比較しながら、年齢別の具体的な目安と、無理なく砂糖を減らす実践的なコツをお伝えします。

この記事でわかること

WHOの砂糖摂取ガイドライン — 「遊離糖類」とは?

WHOが2015年に発表したガイドラインWHO, 2015は、世界中の子供の食生活に大きな影響を与えました。ここで重要なのが「遊離糖類(free sugars)」という概念です。

遊離糖類に含まれるもの

  • 添加糖: お菓子・飲料・料理に加えられた砂糖、ブドウ糖、果糖など
  • はちみつ・シロップ: 天然由来でも遊離糖類に分類
  • 果汁: 100%果汁でも、搾った時点で遊離糖類に。丸ごとの果物は含まれない

遊離糖類に含まれないもの

  • 果物・野菜に含まれる糖: 丸ごと食べる果物の糖は対象外
  • 牛乳の乳糖: ラクトースは遊離糖類ではない
  • 穀物のデンプン: 消化されて糖になるが、遊離糖類には分類されない

WHOの推奨量

推奨レベル エネルギー比 意味
強い推奨10%未満遊離糖類を1日の総エネルギー摂取量の10%未満にする
条件付き推奨5%未満5%未満に抑えるとさらに健康上の利益が期待できる

また、WHOは2023年に2歳未満の乳幼児については遊離糖類の摂取をゼロにすることを推奨するガイドラインを発表しましたWHO, 2023。これは、味覚が形成される重要な時期に甘味への嗜好を強めないためです。

日本の食事摂取基準との比較

日本の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」厚生労働省では、砂糖(添加糖)に関する数値基準は設定されていません。

日本とWHOの比較

項目 WHO(2015・2023) 日本(食事摂取基準2025)
添加糖の上限値エネルギー比10%未満(強く推奨)明確な数値基準なし
理想的な目標エネルギー比5%未満
2歳未満遊離糖類ゼロを推奨離乳食で砂糖を控える旨の記述あり
間食の位置づけ食事の補完エネルギーの10〜20%を目安

日本には明確な数値がないからこそ、WHOのガイドラインを参考にすることが実用的です。以下の年齢別目安はWHOの「10%未満」「5%未満」をベースに算出しています。

年齢別 砂糖摂取量の目安(1〜12歳)

以下の表は、厚生労働省の「推定エネルギー必要量」とWHOのガイドラインを組み合わせて算出した、年齢別の遊離糖類の上限目安です。

年齢 推定エネルギー必要量 10%未満(上限) 5%未満(理想) 角砂糖換算(10%)
1〜2歳約950kcal約24g約12g約6個
3〜5歳約1,300kcal約32g約16g約8個
6〜7歳約1,550kcal約39g約19g約10個
8〜9歳約1,800kcal約45g約23g約11個
10〜12歳約2,100kcal約53g約26g約13個

※ 推定エネルギー必要量は身体活動レベル「ふつう」の男女平均。角砂糖1個=約4g。
出典: 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」のエネルギー必要量をベースに、WHOガイドライン(2015)の計算式を適用して算出

2歳未満の場合

WHOの2023年ガイドラインでは、2歳未満には遊離糖類を与えないことを推奨しています。この時期の味覚形成が将来の食嗜好に大きく影響するためです。果物そのものの甘さ、母乳・ミルクの乳糖は問題ありません。1歳のおやつガイドでは、砂糖なしのおやつアイデアを詳しく紹介しています。

市販おやつの砂糖量 — 知って驚く数字たち

「うちの子はそんなに甘いものを食べていないはず…」と思っていても、実は意外なところに砂糖が隠れています。主な市販おやつ・飲料の砂糖量を一覧にしました。

食品 1回の目安量 遊離糖類 角砂糖換算
チョコレート菓子(1箱)50g約25g約6個
グミ(1袋)50g約35g約9個
アイスクリーム(カップ1個)120ml約20g約5個
100%果汁ジュース(200ml)200ml約20g約5個
炭酸飲料(350ml缶)350ml約39g約10個
菓子パン(あんぱん1個)90g約28g約7個
ヨーグルト(加糖・1個)100g約12g約3個
ビスケット(5枚)30g約10g約2.5個
ゼリー飲料(1本)180g約15g約4個
シリアル(1食分)40g約12g約3個

※ 代表的な市販品の平均的な数値。商品によって異なります。日本食品標準成分表および各メーカーの栄養成分表示を参考に作成。

注目ポイント: 3〜5歳児のWHO推奨上限(32g)は、チョコレート菓子1箱+100%果汁ジュース1杯でもう超えてしまう計算です。「100%だから大丈夫」と思いがちな果汁ジュースも、WHOの定義では遊離糖類に含まれるという点を知っておくことが大切です。

砂糖の過剰摂取が子供に与える影響

砂糖は「絶対悪」ではありません。体を動かすためのエネルギー源であり、お菓子を食べる楽しさは子供の心の栄養でもあります。ただし、過剰摂取が続くと以下のリスクが科学的に報告されています。

1. むし歯のリスク増加

WHOが砂糖の摂取制限を推奨する最大の根拠がむし歯(う蝕)です。遊離糖類の摂取量が多いほど、また摂取頻度が高いほど、むし歯のリスクが上昇しますWHO, 2015。特に「だらだら食べ」は口腔内のpHが長時間酸性に傾くため、歯のエナメル質への影響が大きくなります。

2. 小児肥満との関連

砂糖入り飲料(SSBs: Sugar-Sweetened Beverages)の消費と小児肥満の関連は、複数のメタ分析で示されていますPubMed。WHOは砂糖入り飲料への課税を推奨しており、実際にメキシコ、英国、フランスなどで導入されています。

3. 血糖値の急激な変動

砂糖を多く含むおやつを空腹時に食べると、血糖値が急上昇(スパイク)した後、急降下します。この変動は、集中力の低下、イライラ、強い空腹感の原因になることがあります。放課後のおやつルーティンで血糖値の安定を意識することが、学校帰りの子供の集中力や情緒の安定にもつながります。

4. 栄養バランスの偏り

砂糖の多いおやつでお腹がいっぱいになると、食事で摂るべきタンパク質・ビタミン・ミネラルなどの栄養素が不足しやすくなります。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」でも、菓子類の過剰摂取と微量栄養素の不足の関連が指摘されています。

5. 味覚形成への影響

幼少期に強い甘味に慣れると、将来にわたって甘味嗜好が強くなる傾向があります。WHOが2歳未満の遊離糖類ゼロを推奨する背景には、この味覚形成期の重要性があります。逆に言えば、この時期に素材の甘さを知る経験は、一生の財産になります。

無理なく砂糖を減らす7つのコツ

「今日からゼロにしよう!」ではなく、少しずつ、楽しみながら。もっと楽しく、もっと賢くおやつ時間を過ごすためのコツをご紹介します。

コツ1: 果汁ジュースを「丸ごと果物」に置き換える

100%果汁ジュース200mlには約20gの遊離糖類が含まれますが、みかん1個なら約8gの天然の糖(しかも食物繊維つき)。ジュースをやめて果物そのものに切り替えるだけで、大幅な糖類削減になります。

コツ2: おやつの時間を決める

「だらだら食べ」はむし歯リスクも上がり、トータルの糖類摂取量も増えがちです。おやつは1日1〜2回、時間を決めて食べる習慣をつけましょう。ナッジ理論を活用したおやつ環境の整え方も参考になります。

コツ3: 飲み物を水・お茶に

実は子供の砂糖摂取量の大部分は飲料から来ています。食事やおやつ時の飲み物を水やお茶にするだけで、砂糖摂取量は大きく変わります。

コツ4: 手作りで砂糖量をコントロール

市販品は味の均一性のために砂糖を多く使う傾向があります。手作りなら砂糖量を自分で調整可能。手作りおやつ簡単レシピ10選では、砂糖控えめの年齢別レシピを紹介しています。

コツ5: 栄養成分表示を見る習慣をつける

市販おやつを選ぶときは、パッケージ裏面の栄養成分表示をチェック。「糖類」の項目を確認し、1回のおやつで10g以下を目安にすると、1日のトータルが管理しやすくなります。

コツ6: 天然甘味料を上手に活用

ラカントやアルロースなどの天然由来甘味料は、血糖値にほとんど影響を与えません。お菓子作りの砂糖を一部置き換えることで、甘さは保ちつつ糖類を減らせます。ただし、甘味料に頼りすぎず、素材の甘さを楽しむ感覚を大切に。

コツ7: 「絶対禁止」にしない

心理学の研究では、特定の食品を完全に禁止されるとかえって執着が強くなることが報告されています。お友達の誕生日会でケーキを食べるのは、子供にとって大切な社会的体験です。普段のおやつを工夫して全体のバランスを取る、という考え方がおすすめです。

まとめ — 数字を知って、もっと賢くおやつを選ぶ

  1. WHOの基準を知る — 遊離糖類は1日のエネルギーの10%未満、理想は5%未満
  2. 年齢別の目安を把握する — 3〜5歳なら上限32g/日、理想は16g/日
  3. 「隠れ砂糖」に気づく — 果汁ジュース、シリアル、ヨーグルトにも意外と多い
  4. 無理なく段階的に — ジュースを果物に、市販を手作りに、少しずつ置き換え
  5. 楽しさは失わない — 見た目はワクワク、中身は栄養たっぷり。禁止ではなく「選ぶ力」を育てる

砂糖の数字を知ることは、子供のおやつを「もっと楽しく、もっと賢く」するための第一歩。完璧を目指す必要はありません。この記事の情報を、日々の小さな選択に活かしてみてください。

エビデンスまとめ

本記事の内容は以下の科学的根拠・公的機関の情報に基づいています。